黒い手形が現れたという和室や妙な音がする台所、首が落ちたという日本人形を順番に見て回る。
一通り回って恵理ちゃんの部屋へ戻ってくる。
よく冷えた麦茶を一口飲んで、みんなふぅと息を吐いた。
「どうだった……?」
緊張した面持ちで恵理ちゃんが私に尋ねる。
「えっと……あのね、私はまだ階位も持ってないし、学び始めてから数ヶ月しか経ってないから、あんまり真に受けないで欲しいんだけど」
うん、と恵理ちゃんが唾を飲み込んだ。
「何も感じないの」
「え?」
「悪い気配を感じないの。寧ろ嘉正くんが初めに言ったのと同じで、お社の中みたいな心地良さがあるんだ。だから、恵理ちゃんを疑っている訳じゃないんだけど、本当にそんな恐ろしいことが起きてるなんて信じられなくて」
申し訳なさで身を縮める。
「ごめん恵理ちゃん、俺も巫寿と同じ意見だ」
すかさずそう言った嘉正くんに続いて、僕も俺もと皆が申し訳なさそうに名乗り出る。
思わずほっと息を吐く。