「俺ソファーで寝たかったー……」
「慶賀、いつまでそれ言ってんの」
次の日の朝、朝ごはんは玉じいの家でご馳走になり、私たちは恵理ちゃんの家をめざした。
よっぽどソファーに未練があるのか、慶賀くんが名残惜しそうにそう言った。
「お泊まり……は厳しいけど、また遊びに来てね。私はいつでも大歓迎だよ」
「まじで!? やりぃ、遠慮なくそうする!」
「遠慮しろバカタレ」
嘉正くんにぱこんと後頭部を叩かれて、頬をふくらませる。
二人のやり取りにくすくすと笑った。
「あ、見えてきたよ。あれが私の家。ガッツリ日本家屋だけど、ガッカリしないでね」
恵理ちゃんは道の先にある平屋の一軒家を指さした。
ほんの数ヶ月前はよくお互いの家を行き来していたはずなのに、それがもう随分と昔のことのようだ。
慣れた手つきで鉄柵の内鍵を外した恵理ちゃんは「どうぞ」と私たちを招き入れる。
お邪魔します、と一歩足を踏み入れた途端家の奥からふわりと温かい風が流れてきたような気がした。