そう立ち上がった嘉正くんにひとつ頷き、私たちは玄関へ向かった。
廊下はひんやりしていて薄暗い。
鍵を開こうとして嘉正くんに止められた。下がってて、と促され一歩後ろに立つ。
ドアスコープを覗き込んだ嘉正くん、次の瞬間────。
「うわぁッ!」
文字のごとくひっくり返った嘉正くんに私まで驚いて悲鳴をあげる。
なんだなんだと駆けつけてきたみんな。
「なんだよ嘉正、びっくりするだろ!」
「た、た、た……ッ!」
「はあ? "た"ってなんだよ。何言ってんだお前」
怪訝な顔をした泰紀くんがかちゃりとドアを開ける。
そこにいたのは、
「あれ、玉じい?」
下の階の住人、玉じいだった。
険しい顔をしてそこに立っている。
その瞬間、私と恵理ちゃん、来光くんを覗いた男子勢が「ウワーッ!」とまるで怖いものでも見たかのように絶叫する。
ええっ、どうして玉じいで絶叫するの?
「バタバタと音がすると思って様子を見に来てみれば────お前たち、巫寿の家で何してる?」
まるで地の底を這うような声に悲鳴をあげた三人が分かりやすく震え上がった。