嘉正くんは額を押えてため息をつく。


「慶賀、もう夜中12時だよ。明日もあるし休むべきだって」

「何言ってんの嘉正? 今日なんのために集まったと思ってんだよ! お泊まり会と言えばトランプだろ! これをやらずにお泊まり会って言えるかよ!」


そーだそーだ! と泰紀くんも便乗して、私と恵理ちゃんは顔を見合せてくすくすと笑った。


「まずは王道のババ抜きからじゃね!」

「いいぜ! 指差しカード交換って何回まであり?」

「いきなりローカルルール出してくんなよ!」



ぎゃはは、と笑い声が響く。

慶賀くんがシャッフルしたカードを配り始めたその時、来訪者を知らせるチャイムが部屋に響いた。

ぱっとみんなが動きを止める。



「もしかして煩かったかな」



嘉正くんが眉を寄せてそう言う。


確かにこの時間の来訪者は珍しい。

真夜中にチャイムを鳴らすということはそれほど火急のようか、何か伝えたいことがある人に限られる。


しかし私の家は角部屋で、外階段の反対側は今は空き部屋。二つ隣まで声が届くほど大きな声で話していた訳でもない。


いったい誰……?


不思議に思いながらも「ちょっと見てくるね」と断りを入れて立ち上がる。


「俺も行くよ。怒られたら一緒に謝るし、不審者の線もある」