「あ、巫寿気づいちゃった? その通りだよ。俺たち双子の言霊の力は生まれた時に割れたんだ。芽が言祝ぎ、俺が呪。俺は呪の要素しか持ってないってわけ」


あはは、といつものように気の抜けた笑い方をした薫先生。

反対に私たちは言葉を失い息を飲んだ。



呪の要素しかない言霊の力。それはつまり、発した言葉が全て呪いになるということ。

言葉に呪を込めることは何よりも危険なのだと、どの科目の授業でも先生たちはからなず一回は口にする。

薫先生は生まれつき、そうなってしまうということだ。




「そんな双子の兄貴。そんで学生時代のクラスメイト。そんで親友のひとりで、そんでライバルで、大切な存在だった」



そんで、そんで、と言葉を紡ぐ薫先生。


なんて寂しげな声なんだろうか。まるで迷子になった子供が、お母さんを探して泣いているように聞こえた。


「そんで、敵しかいないこの世界で唯一俺のことを心の底から愛してくれた人。俺が強くなるきっかけになった人」









────俺が、この世で一番殺したい人なんだ。





強い風が吹いた。

湿気と雨の匂いを含んだ妙に不吉な風だった。



【続く】