「校庭、一応祓ったけど空亡の残穢を食った妖が暴れてたんだ。奉納祭は中止、皆はホームルーム教室で一旦待機ね。先生たちが戻るまで自習、教室から出ないように」

「いやいやいやいや、薫先生! そんなん今はどうでもいいよ!」

「そうだよ! どういうことなんだよ、あのロン毛野郎は!」



まくし立てる二人に、「もー、わあわあうるさいよ」と耳の穴に小指を差し込む。

薫先生! と皆が険しい顔で名前を呼んだ。


先生は足元に視線を落とした後、ゆっくりと反橋の下で立ち尽くす喜々先生を見つめて、目を伏せた。




「俺の兄貴だよ。双子の。血を分けた兄弟。言霊の力も分けちゃったけど」

「双子の兄貴……? あんな明らかに頭おかしい奴が先生の兄貴なのか!?」



慶賀くんが顔を顰める。



……いや違う、今はそうじゃない。

喜々先生の研究室に忍び込んだ日に、鶴吉さんとした会話を思い出す。


『言霊の力は言祝ぎと呪のふたつの要素から成り立ってるだろ? で、その力は生まれた瞬間から、なんなら母ちゃんの腹の中から俺たちの中に宿るんだけど……双子の場合、99パーセント"割れる"』

『割れる?』

『言霊の力のふたつの要素が割れる。つまり一人は言祝ぎの要素だけを有した言霊の力、一人は呪の要素だけを有した言霊の力を持って生まれちまうって事だ』


「言霊の力も分けちゃったけど」────もしその言葉通りならば薫先生と芽さんは。