パンッと芽さんの腕を払い除けると、私を背に守るようにして前に立った人がいた。
真っ白な白衣に紫色の袴、不揃いのショートボブの襟足に目を見開いた。
「喜々、先生……」
「全員橋の影まで下がってろ」
突き飛ばされてその場に尻もちを着いた。駆け寄ってきた嘉正くんが私の手を引き立ち上がらせると橋の影まで引っ張る。
対峙しあう芽さんと喜々先生を困惑しながら見つめる。
訳が分からない、なんで喜々先生が。
「おお喜々! 久しいね、元気だった?」
「ああ、それなりに」
「そうかそうか。それにしてもまた髪の毛自分で切ったの? 宙一はもういないんだから、ちゃんと美容院行きなよ」
「いい、面倒だ」
まるで旧い友達と久しぶりに再会でもしたかのように、ふたりの会話は親しげだった。
あの喜々先生が、だって昔親友"だった"と言った薫先生とですら、こんな風に喋ったりしなかったのに。
私たちはただただ状況が理解できず、困惑しながらも成り行きを見守るしかなかった。