巫寿、知り合いか?と亀世さんが芽さんから視線を逸らさずに静かに尋ねる。

知り合いであることには間違いなくて、はいとひとつ頷いた。



「あれ、おかしいね。元気な生徒が多いな。俺の目論見では教員生徒神職のほとんどが声が出なくなってろくに戦えない状態になってるはずなんだけど」

「芽……さん、何を」

「あ、嘉明くん。久しぶりだね。せっかく俺があげた"カブト虫"、ちゃんと育てなきゃ駄目じゃないか」



先輩たちの纏う空気が一瞬で鋭くなった。



「おお、怖い怖い。今の高等部の生徒は優秀って聞いてるからね、下手なことできないなぁ」

「誰だ、お前。ここはまねきの社だ、招かれざる客は入れない神域だぞ」


亀世さんを背に隠すようにして鶴吉さんが一歩前に出る。

芽さんは冷たい目で見下ろすと不敵に笑った。



「俺は招かれざる客じゃないよ。招かれないと社には入れない、常識じゃないか」



笑っているはずなのに、笑っているように見えない。まるで仮面のような張り付いた笑顔に背筋がぞっとする。



「本当は神職たちが機能してないうちに皆殺そうかなって思ってたんだけど……なぜかピンピンしてるみたいだし今日は大人しく帰るよ。────ああ、でもその前に」



瞬きした次の瞬間、芽さんの腕が私の鼻先に伸びた。

恐怖で身体がすくんで、目すら瞑ることが出来ない。


ダメだ、と思った次の瞬間、目の前で白い袂が翻った。