ぐずぐずと鼻をすする嘉明くんの視線に合わせるように、亀世さんがその場に膝を着いた。


「なぁ、嘉明」

「……なぁに?」

「あの虫、どこで見つけた? 虫取り網で取ってきた訳じゃないだろ?」



その問いかけに眉根を寄せる。


事の発端は、嘉明君の部屋だった。

嘉明くんの部屋は巣になっていて、増えた応声虫は部屋の隙間や排水管を通って学生寮全体に広まったんだという。

だから部屋の近い生徒が次々と寄生され、学年によって患者の人数が違ったらしい。




陶護先生の計らいで、詳しい事情聴取は退院後になると聞いていた。

きっとこの後、嘉明くんは先生たちに質問攻めにされるんだろう。可哀想だけれど、今回ばかりは仕方がない。



「もらったの」

「もらった? いつ? 誰に?」

「えっと、えっと……二学期、はじまるまえに……鬼脈で……しらない人から……」

「お前、知らない人から物貰ったのか?」



嘉正くんのその問いかけに、叱られると思ったのか嘉明くんはびくりと肩をすくめる。

ため息をついた嘉正くんは膝を着いて嘉明くんの両肩を掴んだ。



「全部ちゃんと話しなさい。じゃないと余計叱られるよ」

「でも、でも、ぼくほんとうにしらない人なんだもん」

「じゃあ、その人になんて言われたの?」

「カブト虫の、タマゴだよって。ぼく、カブト虫のタマゴみたことないから、カブト虫だと思って……」


涙が長いまつ毛に溜まって、ポロポロと頬を伝った。

嘉明くんなりに、大変なことをしてしまったんだと自覚しているんだろう。