おどけたように両手を差し出した瑞祥さんを、迷うことなく抱きしめた。
驚いた瑞祥さんが顔を真っ赤にして硬直する。
「心配かけすぎだよ、馬鹿瑞祥」
湿って震えた声に怒った口調、でも聖仁さんの表情はここにいる誰よりも優しかった。
固まっていた瑞祥さんもやがて強ばった顔を緩めるとその肩に頭を預けると、背中の服をきゅっと握った。
二人の間に言葉は無い、抱きしめる腕の力強さが全部を物語っていた。
「おいお前ら、イチャつくなら他所でやれ」
おらよ、と聖仁さんの背中を蹴飛ばした亀世さんはケッと顔をしかめる。
ちょっと!と聖仁さんは声を上げたけれど、呆れたように肩を竦める。そして「ちょっと外すね」と瑞祥さんの手を引いて、歩いていった。
わぁっ、と心の中で声を上げる。
今この瞬間に一緒になって騒げる女友達が居ないのがもどかしい。慶賀くん達は何にも気が付いていないらしく「ホント仲良いなぁ」と笑うだけだ。
帰ったら恵理ちゃんに電話しよう、と速攻で心に決めて遠ざかっていく二人の背中をドキドキしながら見送った。
「あれ、瑞祥さんが戻ってきたってことはつまり────」
あ、と声を上げたその時。
「やっと見つけた。ここにいたんだ」
反橋の影からひょこっと顔をのぞかせたその人にみんなは目を輝かせた。
「嘉正くん……!」
「みんな久しぶり。先生たちに聞いたけど、大手柄だったんだってね?」
くすくす笑いながら歩いてきた嘉正くん。その影には嘉明くんもいて顔をほころばせた。