「うわーっ、どうしよう緊張する!」
「もっと練習したかったよぅ……」
神楽殿の舞台袖、神楽部男子の群舞発表が始まって盛福ちゃんと玉珠ちゃんが泣きそうな顔で私に抱きついてきた。
ふふ、と笑いながら二人の背中を励ますようにぽんぽんと叩く。
「大丈夫だよ、二人とも。病み上がりの体なのに練習すっごく頑張ってたもん」
「うっ、これが月兎の舞を踊った女の余裕か……」
「うぅ……これが全校生徒を救ったヒーローの余裕です……」
「そんなじゃないってば」
苦笑いで肩をすくめる。
やがて演奏が静かに終わって、男子たちが祭殿に向かって深くお辞儀する。客席に座る沢山の生徒や教員たちがわっと拍手を送った。
始まるよと背中を押すと、泣きそうだった二人の顔が引き締まった。
今日は奉納祭、二学期で学んだことをまねきの社の御祭神さまである須賀真八司尊に披露するお祭りだ。
朝から神楽殿や運動場では沢山の演武が披露されている。
午後からの学年発表までは自由に見学していいので、泰紀くんの所属する槍術部を見に行ったけれど"型"と呼ばれる迫力ある演武には圧倒された。
慶賀くんと亀世さんの薬学部は調薬室で実験教室を開いていて、11時頃にみんなで観に行った時には【不慮の爆発事故により薬学部の発表は中止となりました】という張り紙が貼ってあった。
間違いなくあの二人が何かやらかしたんだろう。