力任せに扉を閉じた鶴吉さんは見事なバックダッシュで扉の反対側まで下がる。



「無理無理無理!!」


慶賀くんは顔を真っ青にして両腕を抱きしめた。



「もうヤダ僕部屋に帰りたいお願い帰らせて!」


うわーっ、と頭を抱えるのは来光くん。



「あー……うわー……」

「お前ら後輩だろ!? 先に行けよ!!」


頼みの綱の先輩二人までこんな調子だ。

そういう私も身体中に鳥肌が立って、言葉が出ない。


「どうなってんだよ嘉正の弟ッ!」

「鶴吉、それよりもこれどうにかしなきゃ……」

「じゃあお前が行けよ聖仁!」

「ごめん、無理」


お前が行けお前が行けと押し付けあいが始まったて、お互いがお互いの背中を押し合う。

どうしよう、流石にあれは……。



「────なんだよ、情けねぇな。これだから都会っ子どもはよぉ」



まるで地獄に垂れた光る一本の蜘蛛の糸のような、雲間から差す光のような、とにかくそんなふうに見えた。

一歩前に出たのは、松明を肩に担ぐ泰紀くんだった。


「俺が中行くから、隙間から出てきたヤツだけ頼むわ」


じゃ、と片手をひらひらさせて歩いていく背中は、これまで見たことがないくらいに頼もしい。

まるで後光が差してるかのようだった。