そんな調子で今は誰もいない二年生の私室を順番に確認していくが、部屋の中で一二匹見かける程度でこれといった何かを見つけることは出来ていない。
んじゃ次の部屋、とやや流れ作業気味になり始めた私達は次の部屋の前に移動する。
「あ……」
五ノ七と書かれた表札代わりのプレートに、見知った名前が書かれていた。
「ここ嘉明くんの部屋だ」
「そーなの?」
「うん、プレートに書いてある」
嘉明くんもかなり早い段階で応声虫に寄生された一人だ。
まだ小さいのに病気の中両親やお兄ちゃんに会えず、きっと寂しかっただろう。
早く元気になって欲しい、そう思いながらプレートを見つめる。
カチャン、とシリンダーが回った。
「お、開けるぞー」
皆は「はいよー」と気の抜けた返事をした。
扉がギィッと開いて私たちのスマホのライトが部屋の中に差し込んだ瞬間、黒い何かが蠢いた。
昔見た有名なアニメ映画で、煤の妖怪がブワッと逃げ出すシーンが一瞬脳裏を過った。
けれどこれはそんな可愛いものではなくて、照らしたライトは床や壁を埋め尽くすほどの黒くて細長い虫を映し出す。
図鑑ではミミズのようなほっそりしたものだったけれど、実際はナメクジのように少し大きさがあった。
「ギャーーーッ!」
見事に全員の絶叫が揃った。