「トイレの方、何か見つかったか?」

「いや、応声虫が数匹いた程度だったよ」

「妙だな……」


学生寮5階の共用ロビーに集まった私たちは、想像と違う結果に皆険しい顔をうかべた。

作戦通り一階の各所からじわじわと5階を目指して階段を登ってきた。その間に各階の共用トイレ、共用ロビーもしっかりと確認しながら上がってきて、もちろん5階も確認した。

亀世さんは5階の共用ロビーかトイレが怪しいと予想していたけれど、確認を担当した聖仁さんと慶賀くんの報告に首を捻る。



「元々そんなに数いなかったんじゃねーの?」


来光くんは顎に手を当てて口を開いた。


「いや……最低でも80匹はいたんだよ。雄雌が半々だとして、もし卵を産んでいたら少なくとも二三倍の数になってるはずだ」


二三倍という言葉に絶句する。

あのニョロニョロが300近くこの寮のどこかにいるってこと?

ああ、倒れそう。


「でももう全部探したじゃん」

「いや、まだ探してねぇ所がある」


鶴吉さんはポケットから細い針金を取り出して不敵に笑った。