祝詞の効果はちゃんとあるみたいだ。この調子で行けば、きっと残りも退治することが出来るはずだ。
頑張ろう、と気合いを入れ直して立ち上がると同時に、廊下の奥からオレンジ色の火の玉がゆらゆらと揺れているのに気がついた。
中央階段に向かって歩いてきているということは、きっと泰紀くんだ。
「泰紀く……ん?」
「おお、巫寿! わり、待たせた?」
「それ、何持ってるの……?」
泰紀くんの手で轟々と燃える炎を呆然と見上げながら尋ねた。
「あ、これ? 待ってる間に暇だったから、落ちてたその辺の枝で作ったんだよ、松明」
「たい、まつ」
「すげぇんだぞコレ、見てろよ? あ、ちょっと危ねぇからそこから動くなよ」
危ない?と聞き返す。
泰紀くんはヒヒッと笑うと、掲げていた松明を前に差し出した。
「神火清明 神水清明 祓い給え 清め給え!」
次の瞬間、松明の先の部分で燃える火がまるで龍のようにしなやかに意志を持って動き出した。
うわ、と声を上げて一歩後ずさる。
火は廊下を自由自在に動き回ると、暫くして松明の上にスっと戻る。
見てみ、とスマホのライトを床に当てた泰紀くん。廊下の隅には黒焦げになったにょろにょろが何匹かいて、顔を引き攣らせた。
「何したの……?」
「知らね、でも何か出来た」



