【26:00ぴったりにスタートな。丑三つ時だから気をつけろよ】
指定された一階の厨房へ続く勝手口の前に立つと、グループトーク画面に鶴吉さんからそんなメッセージが届いた。続けざまにみんなから「了解!」のスタンプがみんなからポコポコと送られてきて、慌てて自分も送信する。
あと三分で午前二時、丑三つ時。妖たちの動きが活発になる時間だ。
ごくりと唾を飲み込んで勝手口を見つめる。
ほんとにうじゃうじゃいるのかな。でもミミズサイズだし、そんなに大きくないから大丈夫だよね?
正直細長くてニョロニョロ動く生き物が大嫌いなので、私も亀世さんと一緒に調薬室で留守番しておきたかった。
でもこれ以上被害が大きくならないようにすることが何よりも先決だ。
「怖くない怖くない……」
できる限りの言祝ぎを込めるつもりで、自分自身に言い聞かせるようにそう言う。
大丈夫、祝詞も教わったし火打石だって持った。もし体に付いたとしても叩き潰せばヤれるって亀世さんも言っていた。
ピピピ、と26時を知らせるアラームがなった。
「よし……」
自分を奮い立たせるようにそう呟き、勝手口のドアノブに手をかけた。



