「赤メノウだ、お望み通り柔らかくてどす黒い赤色の石だ」

「ありがとう、完璧。けどそれ使っていいの?」

「借りるだけだよ。返せば叱られない」


つまり勝手に使えば叱られるような代物らしい。

受け取れよー、と引き出しから取り出したその石をポンポンと放り投げた亀世さん。慌てて両手を差し出して胸の前でキャッチした。

後これも、と鋼鉄の棒を放り投げた。



「あの、聖仁さん。これは……?」

「火打石だよ。火切金でこすると火花が出る。ほら」


聖仁さんが石を撫でるように金具を動かせば、細かい火花がぱちぱちと散った。



「さっき教えた祝詞の後に、これを大幣を振る容量で左右左の順に二回打つ。それで切火清祓(きりびきよめはらい)ができるはずだよ」


左、右、左……聖仁さんがやっていたように石を撫でるように棒を動かす。

ぱちぱち、と火花が散って驚いて手を引っ込めた。


思ったよりも小さな力で火花が出るんだな。


目を丸くして、まじまじとふたつを見比べた。



「見つけたら片っ端から燃やせ。遠慮要らんぞ、じゃないと図鑑で見たあいつらが穴という穴からお前たちの体の中に────」

「ギャーッ!! キモイーー!!」



体を抱きしめて飛び上がった慶賀くんは、虫なんてついて居ないのに叫びながら頭や肩を必死にはたく。

何だか私も首の後ろがソワソワして、思わず手を伸ばした。