「神火清明 神水清明 祓い給え 清め給え、神火清明 神水清明 祓い給え 清め給え、神火清明 神水清明 祓い給え……ねー、聖仁さん! これが応声虫を祓う祝詞なの?」
「おいこら慶賀、口を止めるな。単細胞のお前は脳に刻み込まれるまで唱え続けろ」
「失礼なんですけど亀世パイセン!? 俺もう覚えたし!」
そう噛み付いた慶賀くんに、皆はくすくすと笑う。
寮には帰らず調薬室へ戻ってきた私達は、応声虫掃討作戦を実行すべく準備に取り掛かっていた。
そこで聖仁さんが教えてくれたのが、この切火清祓の祝詞だ。
「いや、実はそれって対応声虫の祝詞じゃないんだよね。どの文献にも詳しい祓い方が載っていないんだ、体から出す方法は何通りかあるみたいなんだけど」
「えっ、それ大丈夫なの!?」
「問題ないよ。今教えた祝詞は、神火で対象を清める祝詞だ。何度か怪虫被害で奏上したことがあるけど、全部これで焼き払えた」
なぜだろう、聖仁さんの"問題ない"という言葉には圧倒的な安心感がある。
なら大丈夫か、と思わせてしまうのはきっと聖仁さんのこれまでの努力と人徳の賜物だろう。
「お、あったぞ聖仁。これでいいか」
亀世さんが調薬室の薬棚の引き出しから、手のひらサイズの赤黒い石を取り出して掲げた。