「……つっかれた〜!」
寮へ続く石階段を登りながら、慶賀くんは大きく伸びをした。
長い一日だったね、と私も伸びながら相槌を打つ。
「やっと嘉正たちは助かるんだよな!」
「恵衣にも薬の効果があったんだし、きっと皆直ぐに良くなるって!」
「ならこれで一件落着だな」
久しぶりにみんなが心から笑って騒ぐ姿を見た気がした。私も満面の笑みで「そうだね」と相槌を打つ。
これで全部終わるんだ、やっと日常に戻る。嘉正くんも瑞祥さんもみんな元気になる。
嘉正が帰ってきたら俺が進んだ分の勉強教えてやるんだ、と得意げに鼻を鳴らした慶賀くんの言葉を遮るように「いや」と亀世さんが口を開いた。
皆は不思議そうな顔で、一番後ろを歩いていた亀世さんを振り返る。
「まだ終わりじゃない」
え? と皆は困惑したようにお互いの顔を見合せた。
終わりじゃないって、一体どういう……。
「応声虫は本来、群棲するような怪虫じゃない。ましてここは"まねきの社"だ。その程度の虫は結界で弾かれるはずなんだ」
「つまり……?」
今度は鶴吉さんが口を開く。
「間違いなく誰かが応声虫の卵を持ち込んだってこったな。それは恐らく、神修の中のどこかで巣を作っている。そこを叩かない限り、同じ事が繰り返されるだろうな」