背後から恵衣くんの肩をガッと掴んだ亀世さん。驚いた恵衣くんが振り返る。
どこか据わった目をした亀世さんが詰め寄った。
「脱げ」
声には出ていないけれど、間違いなく恵衣くんの口が「は?」と動いた。
その場で固まってしまった恵衣くんにチッと舌打ちした亀世さんは、彼のシャツに手をかけた。
「か、亀世パイセン!? こんな公共の場で……キャッ」
「ふざけてる場合か慶賀! 亀世を止めろ! 恵衣が襲われる!」
鶴吉さんのその声で、みんながわっと亀世さんに駆け寄る。
「寄るな!」
亀世さんの一喝でみんなは戸惑うように動きを止める。
「襲わんから脱がすぞ」
言い切る前に恵衣くんのシャツを脱がせた亀世さんは、恵衣くんのちょうどおへその上辺りにグッと顔を寄せた。
みんなはごくりと唾を飲み込みその行方を見守る。
「────あった、これだ」
静かにそう言った亀世さんは、適当に恵衣くんにシャツを着せると私たちの方へ振り返った。
「一連の騒動の原因は……応声虫だ」