「どうだ?」


そう問われて申し訳なく思いながらも小さく首を振る。



「嬉々先生のノートにも全く同じことが書かれていました。正直、亀世さんのこのノートの方が詳しいくらいです」

「やはりそうか……」



ふぅ、と息を吐いた亀世さんは険しい顔で頭を抱える。

そんな様子に申し訳なくて、もう一度ノートを見返した。


しかしやはりヒントになるようなものは何も無さそうだ。

嬉々先生のノートには────被呪者の症状、連日の高熱、嘔吐、食欲不振、失声……

失声?


「あっ」

「何か思い出したか!?」



ガタッと音を立てて身を乗り出した亀世さんに、若干身を引いて苦笑いを浮べる。



「あの、もしかしたら全然関係ないかもしれないんですけど……」

「構わん続けろ!」



そう言われて、もう一度あの研究室で見たノートのことを思い出した。



「下線が引いてあったんです。"失声"の症状のところに」

「下線?」

「あ、こういう感じで……ピーッと」


亀世さんのノートにある"失声"の文字を指でなぞった。