「ちょっとこれ、見てくれ」
そう言って差し出されたのは観月祭の前に図書室で会った時、私に見せてくれたノートだ。患者の症状や容態が詳しく記録されている。
「えっと……」
「嬉々先生のノートと相違がないか、もう一度見てくれないか?」
「嬉々先生の?」
「ああ。先生も正体は突き止められていないが、調べてはいたんだろう? 先生が気が付いていて、私達が見落としているものがないか確認して欲しい」
なるほど、と頷いた。
嬉々先生が犯人ではないと分かった今、嬉々先生の研究ノートは貴重な資料だ。
照らし合わせることで何か新しい気付きがあるかもしれない。
「まぁ座れ」
そう言われて亀世さんの前に座ると、すっとノートが差し出された。
患者の症状や体温の推移が時間の経過と共に詳しく記されている亀世さんのそのノートは、正直言えば嬉々先生のものよりも詳しい。
風邪に似た自覚症状、連日の高熱、食欲不振、どれも嬉々先生のノートに書かれていたことと同じだ。



