倒れた石灯籠を囲った私たちは緊張した面持ちで顔を見合せた。


「嘉正、俺らは何をしたらいい?」

「まずはこの石灯籠に宿る魂の鎮魂、"復命祝詞(ふくめいのりと)"を奏上して、それから男の子の中に入り込んだ祟りを祓う"祓詞(はらえことば)"の奏上」

「復命祝詞なら覚えてる!」


5月末の授業で習った祝詞だ、奏上すれば鎮魂に作用する。

す、とみんなの呼吸に合わせて深く息を吸う。


礼をする前の小さな一礼、(ゆう)をして二礼、二拍手。

隣の男の子の背中に軽く触れると、彼は慌てて顔の前で手を合わせた。


「────(あや)(かしこ)天照(あまてらす)國照(くにてらす)統大神(すめおおかみ)御前(ごぜん)に拝み奉り諸諸(もろもろ)命神等(みことがみたち)世世(よよ)御祖命(みおやみのみこと)教主命(おしえぬしのみこと)(めぐみ)(かがう)れる人等の御前をも尊び奉りて恐こみ恐こみも白さく」


私たちの声が揃えば、心地よい風がどこからともなくふわりと吹き抜ける。

まるで5匹の龍が螺旋状のように絡まりあいながら灯篭の周りを渦巻く。


統大神(すめおおかみ)の高く尊き霊威(みたまのふゆ)(かがう)り奉りて任け給ひ寄さし給ひし大命(おおみこと)の違ふ事無く怠る事無く仕へ奉ると諸諸(もろもろ)(すさ)(とう)ぶる禍津日(まがつひ)禍事(まがごと)(けが)るる事無く横さの道に迷ひ入る事無く言退(ことさ)け行ひ(やは)して玉鉾(たまほこ)直指(たださす)す道を踏み違へじと真木柱(まきばしら)太敷(ふとし)く立てて仕へ奉りし(さま)(かたじけな)み奉りつつ復命竟(かえりごとまをしを)へ奉らくを見備(みそな)はし給ひ聞こし召し給ひて……」