「持ってきてよ来光〜」
「なんで僕なんだよ! 食いたいやつが取ってこい!」
「ケチ」
「はァ!? それお前が言うの!?」
ヒートアップする来光くんに聖仁さんが「まぁまぁ」と宥めに入る。
公平にじゃんけんで負けた人が取りに行くという事になり、見事に私が一人負けして取りに行くことになった。
真夜中の寮の廊下は何度歩いてもなれない。空気がひんやりしていて、静かすぎて耳鳴りがする。
誘導灯の緑のライトが少し不気味だ。
早く取って戻ろう、と急ぎ足で階段をおりて無事に厨房にたどり着く。
ホッと息を吐いたその時、ポンと自分の肩を冷たい手が叩いた。
ほぼ反射で悲鳴をあげようとしたものの、その冷たい手は私の口を抑えた。
恐怖で完全に足が竦んでいると、目の前に白い何かが差し出されて思わず目を細める。
目が慣れて来てよく見ると、スマホの画面だった。
【馬鹿、落ち着け】
弾けるように振り向くと、私服姿の恵衣くんがそこに立っていた。
手が離れてぷはっと息を吐く。
まだバクバクとうるさい心臓を服の上から抑え肺の空気を全て吐き出した。
「恵衣くん……! 脅かさないでよ……!」
小声でそう訴えると、恵衣くんは直ぐにすすっと画面を触りこちらに向ける。
【人のせいにするな。お前が勝手に驚いたんだろ】



