まずは寮に戻って、と段取りを考えながら走っていると、探すまでもなく松葉色の制服を見つけることが出来た。
学舎のあるエリアへ続く石階段のそば、ちょうど本殿の真裏の壁の前に聖仁さんは立っていた。
ホッと胸をなでおろし「聖仁さん!」と駆け寄りながら声をかける。
私の呼び掛けに気が付かないのか、聖仁さんは壁に向き合ったままぴくりとも動かない。
聖仁さん……?
不思議に思いながらその背中に近寄れば、聖仁さんが壁に向かって手を合わせているのに気が付いた。
風に乗って祝詞が聞こえてくる。初めて聞いたものだった。
「聖仁さん……?」
「うわっ!」
びくりと体を震わせて弾けるように振り向いた。目を丸くしながら私を見下ろす。
数度瞬きして「なんだ、巫寿ちゃんか」と胸に手を当てて深く息を吐いた。
「ご、ごめんなさい。驚かせるつもりでは……」
「ううん、こっちこそごめん。もしかして、俺の事呼んでた?」
「あ、えっと……はい」
「わあ、ごめん。申し訳ない」
申し訳なさそうに笑った聖仁さんに、小さく首を振った。