「……っと、ここにもいないか」
棚の影から亀世さんが顔を覗かせ、きょろきょろと辺りを見回す。
その後ろには恵衣くんの姿もあって、亀世さんの今朝の診察が終わったらしい。
「誰か探してますか?」
「おう。ちょっと聖仁に聞きたいことがあるんだが、あいつどこ行った?」
「"皆の飲み物取ってくるよ"って出て行って……そういえば結構経ったのに帰って来てないですね」
スマホの画面を叩いて時間を確認すると、確かに聖仁さんが出ていってから40分近く経っている。社頭から寮の厨房までは歩いても往復10分程度しかかからないはずなのに。
「私、探してきます」
「いい、いい。先生か神職に見つかって説教を食らってたとしても、そのうち帰って来るだろ」
亀世さんは「行くぞ」と恵衣くんの首根っこを掴むと、私達に手をひらひら振って棚の影に消えて行った。
「聖仁さん、見つかっちゃったのかな」
「どうだろ……」
窓の外を見た。相変わらず天気は冴えない。
何だか胸の奥がざわざわして落ち着かない。
「来光くん、私やっぱり探してくる。誰かに聞かれたら、答えといてもらっていい?」
「了解。巫寿まで見つからないようにね」
うん、と頷いて近くの窓をカラカラと開けると、そこから外へ飛び出した。