「君らホントに嬉々こと疑うのが好きだね。まぁ嬉々にも疑われるような原因はあるんだろうけど……」
原因、という言葉に声を上げた。嬉々先生の研究室で見たものの事を思い出したからだ。
みんなの視線が私に集中して、恐る恐る言葉を紡ぐ。
「あの、私見たんです。嬉々先生がおかしなノートを持ってるのを……」
「おかしなノート?」
「内容は難しくて分からなかったんですけど、"被呪者"とか"呪"とか沢山書かれてて」
私がそう言った途端慶賀くんが「ホラー!!」と興奮気味にその場で足踏みした。
「あ、でも今回の件については不明って書かれてたから、証拠にはならないかもだけど……」
「でも嬉々先生がこの件について調べてるって事は確定だろ!? つまり関わってるってことだろ!?」
だよな!? と身を乗り出して鶴吉さんに尋ねる慶賀くん。
「あははっ、話飛躍し過ぎ。それに巫寿が見たのは嬉々の研究ノートだよ。表紙に大字で数字書いてるやつでしょ?」
どうしてそれをと目を丸くすると、薫先生は肩を竦めた。
慶賀くんはちぇ、とつまらなさそうに唇をすぼめるとどさりと椅子に腰かけた。
「薫先生、しかしそのノートがただの研究ノートだと言うのは事実かどうか分からないだろ。それこそ薫先生の思い違いかもしれない」
亀世さんは顎に手を当ててそう言うと、見定めるように顎を引いて薫先生を見据えた。
「あははっ、とことん疑うね〜」