「あははっ! ごめんごめん、ちゃんと言い聞かせるから許して。俺らの仲でしょ」
嬉々先生は何も言わなかった。代わりにスっと目を細めて冷たい瞳で私たちを見下ろす。
「椎名巫寿京極恵衣、文殿清掃三ヶ月の罰則だ」
それだけ言い残すと、音を立てて扉を閉じた。
「あははっ、君らほんっと罰則が好きだねぇ」
薫先生はどさりと椅子に腰かけた。
あまりにも一瞬のことに呆然と閉まった扉を眺めた。
「巫寿! 恵衣! どこだーっ!」
ふと扉の外から泰紀くんが私たちの名前を呼ぶ声がして慌てて立ち上がり顔を出した。
「うおっ巫寿!?」泰紀くんは薫先生の研究室から顔を出した私に驚いた顔をした。
その手には嬉々先生の研究室に脱ぎ忘れてきた私たちの上履きが握られていた。
「お前らどこ行ってたんだよ! 黙って置いてくなんて酷いじゃねぇか!」
「ごめん嬉々先生見つかって……って、泰紀くんこそどこにいたの!」
「え? え〜っと俺はその……ちょっと便所に……」
「泰紀くん……」
どうりでおかしいと思った思ったんだ。
研究室の外にいた見張り役の泰紀くんが見つからず、私達だけが嬉々先生に捕まるのは変だ。
「へへ、悪ぃ」
肩を竦めた慶賀くんに額を押えて深く息を吐いた。