手に取って表紙を確認する。
ただ表紙には【参拾漆】とだけ書かれている。
さんしゅう、うるし……?
いや違う、これは多分大字だ。今ではあまり見なれないけれど、歴とした数字表記の仕方。授業で使う教科書や巻物にも度々出てきた。
これは参拾漆、三十七。
でも一体、どういう意味が……?
そっとノートの一ページ目を開ける。綴られた見慣れた文字は、嬉々先生の筆跡だった。
内容は全く分からなくて、ただ時折「被呪者」「作用」「解呪方法」なんかの言葉が辛うじて拾い上げれた。
被呪者────呪いを被った者。
どくん、と胸が嫌な感じに高鳴る。
嬉々先生は呪いを専門に研究している人だ。自分でまとめたノートを持っていたって可笑しくない。
分かってはいるけれど、疑心は確信に変わり始める。
そっとページを捲った。左側は白紙だから最後のページだろう。
文字の書かれたページを上から流し読む。ある1行に目が止まった。
────被呪者の症状、連日の高熱、嘔吐、食欲不振、失声。
思わず身を乗り出した。
だってこれは、この症状は。
────予測できる憑物、呪、不明。
「不明」の文字を指でなぞり、自分の体から力が抜けていくのがわかった。
不明、不明……?
だって嬉々先生は何か知っているような口振りだった。今回の一件で、何か分かっていたんじゃなかったの?