「あ、ありがとう……!」

【面倒をかけるな面倒くさい】



返す言葉もない。ごめん、と肩を落とした。



訳の分からないものには触らないようにしつつ、任された棚はざっと一通り確認した。

何か今回の件に繋がりそうな物は見つけることが出来なかった。そもそも私には用途が分からないものばかりだったので、全く戦力になっていないと思うけれど……。


嫌々付き合ってくれているけれど、私よりも丁寧に物色する恵衣くん。

まだもう少しかかりそうなので、もう一度やり直そうかなと奥の壁に歩みよって、コツンと文机の足を蹴飛ばしてしまった。


バサバサ、と音を立てて机の上の書物が崩れ落ち、ギョッと目を見開く。

背中で大きな舌打ちが聞こえてより一層身を縮めた。



両手を広げて慌ててかき集める。


もう、ほんとに最悪だ。そもそも私が嬉々先生の研究室を調べようって言ったのに全然役に立ててない。


情けなさにため息をこぼしたくなるのをグッと堪えて散らばった本や書類をせっせと一箇所にまとめる。

そこでふと、この古びた物の倉庫のような場所にに使わない、一冊のノートが紛れ込んでいるのに気がついた。


私たちが板書を写しているノートと同じ、罫線が引かれたシンプルな白いノートだ。