改めて棚を見上げた。

一つ抜き取れば崩れ落ちそうなほどギチギチに詰まった本の数々に、御札が貼られた怪しげな壺。触れれば呪われそうなお面なんかもある。

照明は着いているけど全体的に部屋の中は薄暗く、なんだかじめっとした空気だった。


「……うん?」


棚の隅々まで見ていると、本と本の間に草の束のようなものが無造作に挟まっているのを見つけた。

本棚に草?

不思議に思って手を伸ばしたその瞬間、横から白い腕が伸びてきて私の手首をガッと掴む。


ヒッ、と息を飲んで振り向けば、険しい顔をした恵衣くんが私の手首を掴んでいた。



「び、びっくりした。恵衣くんか」



ばくばくとうるさい心臓を抑えてふうっと息を吐く。

恵衣くんは空いた片手でまたスマホを高速打ちすると画面を私に差し出した。



【お前は馬鹿か? それ藁人形だぞ。死にたいのか?】

「藁……ッ!」


思わず声を上げて手を引いた。

触らないように本をどかして棚を覗き込む。胸に錆びた五寸釘が打ち込まれたそれは、紛れもなく藁人形だった。