がちゃり、と音を立てて開いた部屋の中へ素早く身を滑り込ませる。
険しい顔で深いため息をついた恵衣くんも私に続いて中へ入ってくる。
静かに扉を閉めて暗闇の中電気のスイッチを探り当てると、ヴンと低い音を立てて蛍光灯にあかりが灯った。
畳張りの六畳くらいの部屋だった。四方の壁は天井まで届く大きな棚で覆われており、古い書物やよく分からない置物、瓶に詰められた何かの塊、とにかく沢山のもので溢れかえっている。
畳の上にもいくつも積み重なった本の塔があって、足の踏み場はほとんどない。
ここが、嬉々先生の研究室……。
その時、がっと肩を掴まれて驚き振り返ると恵衣くんは私の顔の前にスマホの画面を突きつけた。
【おい、もういいだろ。俺は戻る】
「あっ、待って! もう少しだけ手伝って……!」
恵衣くんはチッと大きな舌打ちをするとズンズンと部屋の奥に入って棚に手を伸ばす。
はあ、とわざとらしく大きく息を吐くとじろりと私を睨んでまたスマホの画面を叩きこちらに差し出す。
【お前、反対側。さっさと動け】
「あ、うん……!」
慌てて上履きを脱いで、畳の上に上がった。