「────じゃ、俺外見張っとくな。何かあったらノックするから」


そう言って泰紀くんは「よろしく」と私たち二人の肩を叩く。

恵衣くんの顔を恐る恐る伺うと、もはや何も感じさせない無表情でそれがよりいっそう怖い。


ごくりと唾を飲み込んで目の前の扉を見上げる。

【玉富嬉々】と書かれたネームプレートがはめ込まれたそこは、間違いなく嬉々先生の研究室だ。


ここまで来るために、皆頑張ってくれたんだ。

なんとしてでも何かしらの結果を持って帰らなきゃ。



先生たちの足止めのために途中で別れた聖仁さんや鶴吉さん達のことを思い出す。


聖仁さんたちと別れたあと、今度はまねきの社の景福巫女頭に遭遇した。

その時は心臓が止まるかと思ったけれど、慶賀くんがお手製の目くらましの煙玉を投げたおかげでなんとか私たちは逃げることが出来た。

囮役を指示されていた鶴吉さんと共に今頃校舎内を駆け回っている頃だろう。


意を決してドアノブに手をかけた。