「お前ら、ここで何してるんだ!」
案の定私たちを見るなり眉を釣りあげてズンズンと歩み寄ってくる。
ひええ、と慶賀くんが廊下の柱の影に隠れた。
「分かってんな、お前ら。亀世の指示通り行くぞ。プラン其の壱────"優等生"! 行け! 聖仁と来光!」
押し出された二人は苦い顔をしながら私たちの前に出る。
「高等部も閉鎖になって自室待機だと言われただろう! どうして出歩いているんだ!?」
恨めしそうに振り返った聖仁さん。「は、や、く、い、け」と口パクで伝える鶴吉さんに深くため息をついて額に手を当てる。
失敗しても文句言わないでよ?
と呆れ気味に目で私たちに訴えると、来光くんを連れて先生に歩み寄った。
「すみません、先生。どうしても授業内容で分からないところがあって」
「お前たち二人が?」
「…………はい」
微妙な間があった。
「しかし今は学校に来ちゃ行かん。自室待機が明けてからにしなさい」
「それが無理なんです先生。僕たちどうしてもここが分からなくて夜しか眠れなくて。ね、聖仁さん」
「そうだね、夜しか眠れなくて」
「そうか……夜も眠れないほど────うん?」
すかさず来光くんが亀世さんから持たされていた教科書をバッと先生の顔の前に広げた。
「ここです、ここ! この神職奉仕活動における心構えの第七章十六節の"神事と妖のこころ"ってところで……」
「わ、分かった! 分かったから少し離してくれ、近い!」
「え、近頃老眼気味で見えにくい? なら外に出ましょうか。ちょうど太陽も出てますし」