呪の要素だけ……?
呪の要素しか有さない言霊の力なんてものがあるのだとしたら、それはかなり危険なはずだ。
私たちが持つ言霊の力は使いたい時にだけ使える、というような便利なものでは無いのだと入学したての頃に薫先生から聞いた。
それは血液みたいなものでずっと体の中を巡っていて、どんな時にでも私たちが発した言葉には言霊の力が宿っているらしい。
無意識下において言霊の力の行使した場合その効果は微々たるものだけれど、それでも他者に影響を与えないため呪と言祝ぎの要素が均一になるように、もしくは言祝ぎの方が勝るようにコントロールする力を幼少期から身につける。
それが呪の要素しかないということは、コントロールは無意味、発した言葉が全て呪いの言葉に転じるということ。ただ言葉を口にするだけで、相手を傷つけてしまう可能性があるということだ。
「俺らは言祝ぎと呪が割れなかった超特別、超例外な双子って訳よ────っと、お喋りはここまでだな」
鶴吉さんがニヤリと笑って前を見据える。
つられて目をやると、廊下の曲がり角を「神職の作法と心得」の担当教員であるまねきの社の神職さまが現れた。
うわ、と顔を強ばらせた泰紀くんたちに「馬鹿! 平然としてろ!」と鶴吉さんが窘める。