「巫寿ッ!」
「だ、大丈夫! でもそれに触らないで、すごく熱いの」
じんじんと痛む手のひらを抑えながらそう伝える。
丁寧に磨きあげられた球体状の石だ。苔が所々に着いているけれど、誰かの手によって人工的に作られたものだと考えられる。
一体どういうこと?
この石から感じた激しい熱は、この男の子には感じず私には感じた。
身を焦がすようなあの激しい熱は、まるで怒り狂う誰かの想念のようだった。
「おい! もしかしてこれじゃないか!?」
辺りを警戒していた泰紀くんがそう指さした先には、倒れた石灯籠があった。
歩み寄ってよくそれを見ると、形はよくある石灯籠だけれど、柱の部分にくずし字でなにかの文字が掘られている。
苔を手で払って目を凝らした。
烏……天?
「烏天狗だ……!」
よく見ればほかの灯篭にも「信太狐」や「憂婦女鳥」という、妖の名前が掘られている。
一学期の授業で習ったことを思い出した。
社の創建や修繕の為に寄進した者の名前は、その
社によって玉垣と呼ばれる石柱や石灯籠に名前が彫られて飾られることがある。



