亀世さんは診察を続けた。

数時間前の「解剖させてくれ」発言は薫先生の「あははっ、流石に教え子バラバラにされるのは黙認できないんだけど〜」の一言で叶わなかった。

チッ、と舌打ちした亀世さん。


本気で解剖しようとしていたらしく、思わず両腕を抱きしめた。

折衷案として、こうして調薬室で恵衣くんの診察をすることになったのだ。





「……よし、とりあえず終わり」


バインダーにさらさらと何かを書き込んだ亀世さんが恵衣くんにそう声をかける。

心の底から嫌そうな顔をした恵衣くんは乱れた服を整えた。



「何か分かった?」

「いや。今のところ恵衣は喉の炎症以外の症状がない。陶護先生の言う通り、ただの風邪という可能性も捨てきれないから何とも言えんな」


そっか、と聖仁さんは分かりやすく肩を落とした。


「まぁそう気を落とすな。自由にできる生きた検体がここにいるんだ」

「亀世さん、それ完全にアウトな発言です」



冷静なツッコミが入り、「ははっ、冗談だよ」と笑う。

冗談に聞こえる冗談を言って欲しい。


恵衣くんなんて絶句してその場に固まってしまった。