ホームルーム教室のある階まで階段を駆け上がってきて、陶護先生が追いかけてきていないことを確認すると、私たちはその場にしゃがみ込んだ。
「相変わらずしつけぇな!」
「銭形かよ……」
ふー、と息を吐いた皆。
恵衣くんが冷めた目で『俺まで巻き込むな』と書かれたスマホの画面を見せる。
確かに恵衣くんは用があってあそこに居た訳だし、私たちと一緒に逃げる必要なんてなかったんじゃ……?
その時、階段下から話し声と足音が近付いて来て、薫先生と亀世さんが現れた。
「あれ! 珍しい組み合わせ! なんで薫先生と一緒に?」
「下で会ったら捕まった」
亀世さんはそう言って、両腕で抱えていたプリントや冊子の束を少し持ち上げた。
「薫先生いつ帰ってきたの?」
「ついさっきね〜。いやぁ、朝から任務とか反則すぎ。しかも、帰ってくきたら、大変なことになってるじゃん?」
大変なこと?
薫先生は恵衣くんに視線を向ける。
「恵衣体調どう? 3限目から高等部も学年閉鎖になっちゃったから、大量に宿題出てるんだよね。体調悪いなら免除できるけど、ついでに持って帰る?」
亀世さんと薫先生が抱えていた大量のプリントや冊子は、どうやら宿題だったらしい。
こくりと頷き頷き手を差し出した恵衣くん。
持って帰るんだ……。