「は、はい……!」
慌てて頷くと、奏楽先生は恵衣くんの背中を押して教室から出ていった。
ぴしゃんとしまった扉を呆然と見つめる。
「マジか……」
そう呟いたのは慶賀くんだった。
「もしかして恵衣、」
「いやでもあれって風邪に似てる症状なんだろ!? いきなり声が出なくなるってあんのか!?」
「そんなの分かんないよッ!」
「恵衣くん、咳してた……」
私の呟きに皆が目を見開いた。
思い返せば、あの原因不明の病気が流行り始めた頃、恵衣くんが苦しそうに咳き込む姿を何度か見かけた気がする。
もしそれが、嘉正くんや瑞祥さんと同じあれの症状だったとしたら、恵衣くんも────。
「おい、俺らも医務室行くぞ!」
「でも医務室がある階は今、生徒の立ち入り禁止になってるじゃん……!」
「階段とこまで行く! んで陶護先生が出てきたら捕まえて聞けばいいだろ!」
行くぞ、と立ち上がった皆。
自分も急いでノートと教科書をかき集めて、慌ててその背中を追いかけた。