もちろん嬉々先生にも研究室がある。その中に入ったことがある人は未だ一人もいないらしいけれど……。


「いや、イケるかも! あの女が授業中の間の50分は間違いなく帰ってこないだろうし!」

「もしバレたら俺たち卒業後も罰則だぞ」

「いやいや流石にそんな罰則はさ〜……」


もしかしたら、あるかもしれない。

多分みんな同じことを考えて顔を青くしたんだろう。



「でも八方塞がりの今の状況じゃ、行動起こすしかねぇか」

「そ、そうだな! これまで散々色んな罰則食らってきたんだ! 俺らに怖いもんなんてねぇよ!」

「罰則食らう前提で進めないでよ縁起悪いな! サッと侵入してサッと帰る、もちろん他言無用!」


おう、と頷いたみんな。

私も「分かった」と緊張気味に頷いた。



決行は明日、四限目。嬉々先生は高等部三年の呪法の授業がある。

私たちの四限目は神役諸法度、担当教員は二学期からまねきの社を定年退職したばかりのおっとりしたおじいちゃん先生になった。


授業が始まって十分くらいは、前の授業が長引いていると思ってサボりを疑われることもないだろう。

それにおじいちゃん先生には悪いけれど、走って探しに来ることもないだろうし安心だ。