何か知っているんですか、と聞いたところで嬉々先生は何も答えてくれないだろうし。
一体どうすれば……。
あ、と声を上げた来光くんにみんなが注目した。
「忍び込む? 嬉々先生の研究室。犯人なら、何か証拠になるものが残ってるかも」
私たちは目を瞬かせた。
「お前……発想が俺らに似てきたな……」
「お前は引き返せる所で止まっとけ……」
「自分らが道踏み外してるのは自覚あったんだね!」
引いた顔で好き勝手言うふたりに、来光くんは目を釣りあげて噛み付いた。
「冗談はさておき、嬉々先生に話しかけるより難易度高くねぇか? それ」
神修の教員には職員室の他に各々の為の研究室がある。
神修は学校ではあるけれども学術研究機関の役割も担っていて、教員であると共に研究者という立場にあるから、というのを初めて薫先生の研究室を尋ねた時に教えて貰った。
薫先生の研究室はどちらかと言うと私室に近くて、大きなベッドにパソコンデスク、ソファーにテレビなんかがあった。
反対に豊楽先生の場合いかにもな研究室で、天井まで届くほど大きな薬棚が壁一面にあって、謎のフラスコでは深緑色の液体がグツグツと煮えていたり、とにかくいかにもな研究室だった。