「────確かにそんなこと言ってた気がするような」
二限目も先生の都合で変更になり、声楽の授業になった。
科目担当の奏楽先生が来るのを雅楽室で待ちながら、さっきの授業で思った事をみんなに話してみた。
来光くんがこめかみを指でトントンと叩きながらそう言う。
「そうだっけ?」
「ほら、漢方薬学の後だよ」
「んー?」
二人は記憶にないらしく、うーんと首を捻った。
「確かに発言は怪しいけど、それだけで疑うのは駄目だよ。前だって、それで嬉々先生を疑って結局は違ったじゃん」
「そう、だよね……」
一学期の鳥居の一件の時だって、あの場に居合わせたと言うだけで嬉々先生を疑って犯人だと決め込んでいた。
「でも、何か知ってそうな言い草だよなぁ」
「直接本人に聞いてみるか?」
「本気かよ泰紀! 聞いて答えるような人じゃねぇだろあの女!」
だよなぁ、と腕を組んだ泰紀くん。
このままじゃ八方塞がり、何にも進捗しない。今すぐにでもみんなを助けたいのに。