嬉々先生は私に何か言うことも無くくるりと踵を返し黒板の前に戻る。そして何事も無かったかのように授業を再開した。
どくどくと大きく波打つ心臓を服の上から抑えた。無意識に止めていた息を細く吐き出す。
思い出した、以前嬉々先生が私達に言った言葉だ。
"一年の割にはなかなかの推察力だな。"
色々あって記憶の隅に追いやられていたけれど、私はその言葉がずっと引っかかっていたんだ。
まるで答えが分かっていて、私たちの考えが核心に近いとでも言っているようにも聞こえる。
嬉々先生は、何か知ってるの……?
チョークを握る青白い指をじっと見つめた。