「あ、薫先生から鳥が来てる」


朝、ホームルーム教室で朝礼が始まるのを待っていると、薫先生の代わりに鳥の形に折られた紙がコツコツと教室の外から窓を叩いた。

来光くんが窓を開けて中へ招き入れると、鳥はそのまま黒板に直進して、べシッと音を立てて潰れた。


ヨロヨロと床に落ちた鳥を拾い上げて折り目を解いて広げると、薫先生の字で「ごめーん、朝っぱらから任務入った」と書かれてあり、朝礼で伝える予定だったらしい伝達事項が綴られていた。



「げ、一限目入れ替えでで憑物呪法だって」



読み上げた来光くんが顔をしかめる。



「嘘だろ!? 俺まだ何にも予習して……ッ!」


慶賀くんの悲痛な叫びは言い終わる前に始業の鐘で掻き消される。

そしてそれと同時に教室の前扉が開いて、音も立てずに嬉々(きき)先生は教卓の前に立った。



条件反射のように席に座った私達を一瞥した嬉々先生。



「今日から新しい単元に入る。教科書367頁第八章蝦蟇(がま)が憑いた場合の人体における症状についてそもそも蝦蟇の憑物は人の耳の中に憑くとされており────」


慌てて机の中からノートを取りだして、板書の内容を書き写した。