「クリーニング出したら、渡すの遅くなった」

「え……クリーニング?」


思わぬ単語に目を瞬かせた。

ただ地面に落としただけのハンカチを、クリーニングに出したの……?


恥ずかしいけど私なんて、地面に落とした程度なら土を払ってそのまま使う時だってある。

クリーニングなんて冬用のダウンと年度末の春休みに学校の制服を出すくらいしか使った事がない。

通りで何となくパリッと仕上がっていると思ったら。



「えっと、ありがとう」

「……さっきも聞いた。何度も言ってたら安っぽく聞こえる」



相変わらずな物言いに苦笑いを浮かべた。



「えっと、これからご飯?」

「見れば分かるだろ」

「……私たちもこれからなんだ。良かったら一緒にどうかな」


私のその問いかけに恵衣くんは一瞬目を丸くした。

しかし直ぐに怪訝な顔で私を見る。



「どういう風の吹き回しだ? 気持ち悪い」


そうとだけ言うとスタスタと歩いていってしまった。


観月祭の日に初めてちゃんと面と向かって少し話をして、恵衣くんの事を少しだけ知れたような気がしたんだけれど。

その背中にため息をつく。


おーい、巫寿!と名前を呼ばれて皆の元へ歩み寄った。