「────おい」


寮に帰ってきた私たちはそのまま厨房で夕飯のお禅を受け取って広間に向かった。

どこに座ろうかと話していると、後ろから多分自分宛に声をかけられて振り向く。


同じように夕飯のお禅を手に持った恵衣くんがそこに立っていた。



「恵衣くん……? どうしたの」

「……これ返す」


そう言って制服の袂から何かを取りだした恵衣くんはずんと私に差し出した。慌てて片手で受け取ると、それは無くしたと思っていた私のハンカチだった。

あ、と目を見開いて恵衣くんを見上げる。


「無くしたと思ってたの。拾ってくれてたんだ。ありがとう」

「は? お前が俺に渡したんだろ」

「え……?」


怪訝な顔をした恵衣くんに自分も首を傾げる。



「……観月祭の日」


ぽつりと呟くようにそう付け足した恵衣くん。


観月祭?

しばらく首を捻って「ああ……!」と手を打った。


そうだ、観月祭の日に恵衣くんに差し出した時に持っていたハンカチだ。

そう、それで恵衣くんに跳ね除けられて落としちゃって……そういえばその後色々あって落としたハンカチを拾い上げた記憶がなかった。

となるとやっぱり恵衣くんが拾っていてくれたんだ。