棚に本を戻しながら少し振り返ると、亀世さんがペシッと聖仁さんの頭を叩いて、鶴吉さんが聖仁さんの背中にのしかかっているのが見えた。
聖仁さんの表情は二人の背中で良く見えない。
みんな言葉には出さないけれど、心の奥にある不安は日に日に大きくなっている。
何もせずにただ待つだけなんて、私達には出来なかった。何かしていないと落ち着かないんだ。
「こんなに探してるのに、何も見つからないなんて」
来光くんが小さな声でそう呟く。
「神職さまも先生たちも、何してんだよっ……」
「このままだと、また────」
慶賀くんは口を噤んだ。
その先の言葉は声に出すことすら怖かったんだろう。
明るさが取り柄だった慶賀くんや泰紀くんの笑っている顔をここ最近はずっと見ていない。
窓の外に目をやった。
観月祭が終わってから、ずっと曇天が続いている。神修の上には分厚い雲がずっと広がっていた。