「聖仁さん、これどう思いますか?」
来光くんが開いた書物の一箇所を指さしながら差し出した。
無言で目を通した聖仁さんは、眉間に皺を寄せて突き返す。
「これは病に関する記述。言ったよね、平癒祈祷が効かなかったから、あれは病じゃないんだって。付き物か呪いか、それ以外なんだって」
普段の聖仁さんからは想像もできないほど苛立った冷たい声だった。
「す、すみません……」
しょんぼりと肩を落とした来光くんは重い足取りで席に戻る。
それを見ていた鶴吉さんが、来光くんに歩み寄ってその肩を揉んで励ます。
「聖仁」
「何? 見つかった?」
「その前にお前はここの空気を悪くするのを止めろ。後輩が怯えてる」
亀世さんが私たちを指さした。
聖仁さんは二三度瞬きすると、深いため息をつく。そして両手で顔を覆うと、椅子の背もたれに体重を預け天を仰いだ。
「……ごめん、みんな」
「分かればいい。お前ら、そろそろ片付けるぞ」
その一声で皆はゾロゾロと立ち上がる。重い足取りで棚から持ってきた巻物や本を片付けに行った。