「どっちから聞こえた!?」

「本殿よりも奥、多分鎮守の森!」

「それって、裏の鳥居のほうか!?」


社頭の人混みを縫うようにして通り抜け、本殿の裏に回って鎮守の森へ入る。

みんなは必死に当たりを見回した。


あの時聞こえたのは、小さな子どもの悲鳴だった。

とても嫌な予感がするのだけれど、残穢や瘴気のあの不快な感じではない。


草木をかきわけ裏の鳥居を目指して進めば、小さな子供の泣き声が聞こえてきた。

火がついたように泣きじゃくる声に気が急く。


背の高い草をかき分けたその時、色褪せた朱色の鳥居が見えた。



「見え、────ッ!」



目の前の景色に言葉を失った。

六七歳くらいの男の子だ。甚平を着て、頭には天狗面を付けている。きっとお祭りに遊びに来たのだろう。

その少年が、まるで十字架にかけられたかのように手足を伸ばして宙に浮いていた。

瞳はガクガクと焦点が合わず、口からは泡を吹いている。


その少年を見上げながら、ひと回り小柄な男の子が土の上に座り込んで泣きじゃくっていた。