治病祈祷祝詞は病や怪我を癒す効果をもたらす祝詞だ。

それが奏上されたということは、神職さまたちはあの病の正体がわかっていたのだと思っていた。

けれど実際はその正体が突き止められた訳ではなく、他に打つ手がなかったが故に半ば賭けの状態で平癒祈祷の儀が執り行われたのだと後から知った。




観月祭の夜、重体になった学生は初等部の四年生の女の子だった。

嘉正くんや嘉明くん、瑞祥さんではなかったことにホッとしてしまった自分が情けなかった。

私がその子の友達の立場だったら、きっと心配でいてもたってもいられないはずだ。


なんとか一命を取り留めたらしいけれど、入院設備が整っているとはいえ医務室でそれ以上の対応は難しいということになり、明け方頃に"理解ある病院"へ移っていった。



平癒祈祷の儀は失敗に終わってしまったけれど、悪いことばかりでもなかった。

あの祈祷を行ったおかげで、分かったこともある。


それは────